「私ね、この薬指が」

「私ね、この薬指が誰かのものになるのが夢だったの」

包帯でぐるぐる巻きにされた左手を、愛おしそうに撫でながら彼女は言った。

僕は目の前に置かれた、小さな箱に視線を落とす。綺麗にラッピングされた、万年筆でも入っていそうな、小さな箱。

「開けないの?」

疑問ではなく、促すように、彼女の声が静かに響いた。

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