写真フォルダの中に見た覚えのないデータが入っていることに気がついたのは、以前食べにいったスーパービックバーガーの写真をクラスメイトに見せようとして、スマートフォンを操作していた時だった。
その時は急いで画面をスクロールした。なぜなら、気づかぬうちに何か変なデータがダウンロードされたのかと焦ったからだ。(男子高校生なので、察してほしい)
帰宅後、自分の部屋でスマートフォンをいじっていたときにそういえばと思い出し、例のデータを開いてみた。それは写真ではなく1分ほどの動画データのようだった。水面が写っていて、真ん中には再生ボタンが表示されている。
まったく見覚えのない光景だったが、僕はイヤホンを装着し、再生ボタンを押してみた。
水面からカメラが上がると、幅が25メートルくらいありそうな川が写った。どこか発展途上国の川のような印象を受ける。動画は、前方にボートを漕いでいる女性を映し出した。
(向島さん…?!)
それは、クラスで一番可愛いと評判の女子だった。でも、なぜ彼女が僕のスマートフォンの動画に? そうこうしているうちに、彼女のボートはいつの間にか浸水し転覆、彼女は川に投げ出された。
『誰か! その子を引き上げてください!』
動画の中で誰かが叫ぶ。周囲の乗客は、流れそうになる彼女を船に引き上げてくれた。
そこまで見て、ぶわわと記憶が蘇った。
叫び声は、自分の声だ。そしてこれは、一週間前くらいに見た僕の夢そのものだった。