「夢の中ならどこにでも行けるって」

「私気づいちゃったの。夢の中ならどこにでも行けるって」

野原で寝そべりながら彼女は言った。風は、夏のあたたかさをほのかに運んでくる。

「フランスでもパリでもニューヨークでも、どこでも。それだけじゃない」

彼女は胸の上に置いていた麦わら帽子を、自分の顔に乗せた。

「どんな人にだって、会える。会えるの」

消え入りそうな声で、彼女は言った。

本当は、夢の中じゃ足りないくせに。
会いたいという言葉の代わりに、彼女は「会える」と言って自分を慰めている。

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