花火なんて何が楽しいのか

花火なんて何が楽しいのか、わからなかった。持っている間なんとなくその火を見つめたり、歩き回ったり、降ってみたり。
僕は毎回花火をするたびに、テンションが上がるわけでもなく、正直手持ち無沙汰だった。周囲の友人がはしゃいでいる雰囲気からはみ出さないようにしていただけだった。

それなのに、僕は今、友人と二人きりで花火をしに人気の無い公園にやってきていた。友人はウキウキした様子で花火の袋を開けた。

「ほら、ようちゃん、花火選んで」

袋を差し出されたので、適当に一本引き出す。赤い細い絵に、カラフルな筒、先にはひらひらの紙が付いている、極めて一般的なタイプの花火。

「花火なんて何年振りだろうね」

友人は、派手な色味のものをチョイスした。
僕らは先端を近づけ合って、一本のチャッカマンで火をつけようとした。少し風があるので二人で立ち位置を変えたりしながら四苦八苦していると、僕の花火が先についた。
友人が慌てて「火ちょうだい!」と言ってきたので、友人の花火に火を吹き付けてやる。ほどなく、友人の花火からもオレンジの火が噴き出した。
友人は嬉しそうに走り出した。僕はそれを追うこともなく鑑賞していた。自分の花火と、花火を楽しむ友人とを。

「ようちゃん! きれいだね!」

僕の返事を期待して、というよりは、感情が溢れ出たという感じで友人は言った。
数年振りに嗅いだ火薬の匂いに、懐かしい気持ちが込み上げてきた。

(ああ、夏だな)

花火なんて何が楽しいのか、やっぱり僕にはわからない。けれど、僕らにはこうして季節を楽しむ時間が必要なのかもしれないなと思った。

僕は自分の花火の火が消える前に、2本目に移そうと、袋の中に手を突っ込んだ。
火が消えてしょんぼりしながら戻ってくるであろう友人のために。

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