下駄箱をひとつひとつのぞいていく。いくら探しても私の靴が見当たらない。
「あった~?」
蒼太が顔をひょいと出し尋ねてきた。私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも首を横に振った。
「エントランスいくつかあるけど、ここのであってる?」
「……わからない」
私は自分の情けなさに消えたくなって、顔が一気に熱くなった。
どうしてこんなことも覚えていないのだろう。そのせいで蒼太に迷惑をかけてしまっている。人に頼ってばかりの自分が嫌になる。
「じゃあ、東のエントランス行ってみるかあ」
そう言うと蒼太はスタスタと廊下に向かって行った。私は慌てて蒼太の後ろに着いていく。
「もういいよ、一人で探せるから、戻って」
「いや、乗りかかった船だ。それに、ここで見放したら、オレ人でなしじゃね?」
軽快な笑い声とともに蒼太が言った。
彼にとってはなんてことのないことなのだろう。それでも、彼の優しさが嬉しくて私は泣きそうになってしまっていた。
「……ありがとう」
「おう」
振り返りもしないで蒼太が言った。
彼の背中を見ながら、私はこの時初めて、彼のことが好きだなあ、とはっきり感じた。