「葵、今日自転車で来なかったのか?」
「いやあ~……自転車で来たよ?」
「じゃあ早く取って来いよ。さっさと行ってテスト勉強の続きしなきゃだし」
「……千尋くん、ちょっとお願いがございましてね。あのですね、ワタクシ、チャリキーを教室に忘れましてね」
「自転車の鍵持たないでむしろ何しに来たんだよ。暑すぎて勉強できないからコンビニでアイス買おうって言い出したの葵だろ」
「いや! お財布とスマホはちゃんと持ってきた!」
「スマホよりは自転車の鍵だろ」
「ねえ、後ろ乗っけて?」
「お前重いからなあ」
「千尋~お願い! 教室戻るのめんどくさいし!」
「校門出たらな」
「わあい! ありがとう千尋!」
「帰りは葵がこげよ」
「まっかせて!」
「うわっ、日向暑っ!」
「暑っ! やべ~ダッシュダッシュ!」
二人の笑い声が、駐輪場に響いた。