自我の中に入ってから、どれくらいが経っただろうか。意識が途切れることもあったため、時間の感覚がひどくあやふやだった。
(深く……深く……)
さまざまなことが頭をよぎる。家族のこと、学校のこと、通学路の景色、部活の練習のこと……取り留めもないことが頭を掠めていくたびに、僕は意識を自分に戻す。もっと深く潜るために。
自分のつま先から、脛、膝と、順順に意識を向けていく。胸まで来たとき、鼓動が鳴っていることに気がついた。
僕の心臓は、休むことなく、動いてくれている。
途端、感情の波が押し寄せてきた。抗うことなどできずに、ただ、流されるがまま身を委ねる。
大きな渦を巻いて、自分を取り巻いていく。激しい嵐の中で、でも、意識の根っこの部分は今までにないくらいに冴えていて、静かだった。
僕はただ観察に徹する。自我はこんなにも深く、静かで、研ぎ澄まさている。
深海とも宇宙とも違う。他のどんな場所よりも、僕は僕だ。