来週の予定を確認しようとスマートフォンを取り出した時、今日の日付の並びにふと目が止まった。初恋の人の誕生日だ。いまだに覚えている自分に、思わず苦笑いをする。
初恋といっても、幼稚園とか小学校とかの話ではない。自分が本当の意味で恋をしたのは、中学三年生の時だった。一年間ずっと好きだったけれど、結局思いは告げられずに卒業してしまった。
(必死に聞き出した誕生日も、結局プレゼントを渡せなかったっけ)
散々悩んで、ちょっとしたお菓子を準備していた。朝会ったら渡そう、移動教室の前に渡そう、昼休みに渡そう。そう思っていたら放課後になってしまった。
諦めて帰ろうと下駄箱に行った時、初恋の人がちょうど玄関を出るところだった。
心臓が高鳴った。急いで靴を履き替えて走れば、追いつける。
しかし足は一歩も動いてはくれずに、その人の背中が見えなくなるまで、その場にたちすくんでしまった。
あれからもう十年以上も経ってしまっている。
(今、何してるのかな)
きっと結婚して、仕事も順調で、幸せなのだろう。そうであって欲しいと思う。
もしも。どこかでばったり会えたなら。相手の幸せを、心から祝福したい。