「千尋はさ、どんな能力が欲しい?」

「千尋はさ、どんな能力が欲しい?」

そう声をかけられた千尋は、読んでいた漫画から顔を上げた。
放課後、千尋の家で二人は漫画を読んでいた。千尋は自分のベッドに横になりながら、葵はベッドに背をもたせかけながら。
二人が読んでいるのは、超能力を持つファンタジーものの漫画だ。

「あぁ~なんだろうな」
「俺は炎系の能力だな。なんだかんだで最強だよ」
「かっこいいよな。絶対強キャラだし……でもさ、日常だと炎使うことってそんななくない? チャーハン作りたい時くらいじゃね」
「いきなり現実に引き戻すなよ。バトルものの体でいこうよ」

千尋は寝転がっている体勢がキツくなってきたので、起き上がった。背中をぐぐっと伸ばしながら続ける。

「俺は……ワープ系がいいかな」
「えぇ~地味くね? それに漫画だと大抵便利屋扱いされるじゃん」
「いや実際便利じゃん。朝ギリギリまで寝てられる」
「割とチート能力なのに活用が地味」

葵はケラケラと笑い、読み終わった漫画を閉じた。

「次そっち貸して」
「俺まだ読んでる」
「えぇ~千尋一回読んでるんだからいいんじゃん」
「いや、読み返してみたら止まらんなこれ。とくにこのライバルとのバトルの展開がなんと……」
「うぉーい! 地味にネタバレぶっ込んでくるな! すみません大人しく待ってるので止めてください!」
「冗談。ほいよ」
「え、良いの?」
「順番待ちされてたら落ち着いて読めないし」
「わーいありがとう!」

そうして二人はまた黙々と漫画を読み始めた。

「おい葵、ヒロインが大変なことに……」
「千尋もう頼むから1巻読んでてくれ」

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